味変しない「らあめん」

日々はあまりにも目まぐるしく変化する。そんな中で唯一変わらない場所がある。「らあめん」だ。

もう僕は社会人二年目で、大学の頃住んでいた家から引っ越した。なのに、今でも時々、大学の近くにあるラーメン屋「らあめん」に足を運ぶ。

「らあめん」にはあまりにもたくさんの思い出がある。ドアに一番近い席は、当時気になっていた子を連れてきた時に座ったところだ。あとから、「好きな子をラーメンに誘うなんてセンスないよ」と言って振られた。今考えるとごもっともなのだが、当時は結構凹んだ。

店長は、注文を間違えても、「うちはそういう店」と返す。それくらい無愛想だけど、僕が仕事で失敗して凹んでいた日には、何も言わずにチャーシューとのりを多めに載せてくれた。そんな店長の無言の優しさに甘えて僕も何も言わなかったけど、無愛想で温かい店長に僕は変わらず救われている。

「らあめん」は変わらない場所でありつつも、僕が変わることを認めてくれる場所でもある。恋愛や仕事に失敗しながら変化していく僕を、変わらない味と店長が癒してくれる。

結局、この変わらない味があるから、僕も安心して変わっていけるのだ。煙の向こうの店長に、心の中でありがとうと言った。