静けさの中で気づくこと

秋の夜に歩いていると、小学生の頃に行った林間学校を思い出す。

秋の風が夏の名残を吹き飛ばして少し寂しい冷たさを運んできた時期だった。友達より早くお風呂から上がった私は、1人で歩いて宿舎まで帰っていた。昼の賑やかさが嘘のように、私を包む空間は静かだった。木々の間を走り抜ける風の音と少し遠くから聞こえる友達の笑い声だけが私の耳に届いた。

その静けさの中で、いつもの夜に自分のそばにあるたくさんの音を思い出した。リズムよく野菜を切っていく包丁の音、「勉強しーや」というお母さんの声、お父さんが帰ってきたときのドアの音、テレビの向こうで笑うお兄ちゃんの声。私はたくさんの音に囲まれて、家族に囲まれて、支えられて生きているんだなと子供心ながらに感じた。ふわふわとした感情になって、鼻の奥がつんとした。

今でも、秋の風がサワサワと音を鳴らすとき、その感情を思い出す。今では、私が包丁や洗濯バサミの音を鳴らしていて、「勉強しーや」と言っている。でも、増えた音もある。娘がランドセルに教科書を入れる音、夫がキーボードを叩く音。音は変わっても今でもその音が私を支えてくれていることは変わらない。そう思うと、また秋の風が頬を撫でた。