一線を越える勇気

ゆうまに彼女ができたという噂は、クラスの中で一瞬で広まった。

ゆうまは一年生の最初の席が隣だった。入学式の日、私は緊張でがちがちだった。ゆうまは、そんな私の顔を覗き込んで、「俺も緊張してる」と笑った。

その日から私たちは急速に仲良くなった。好きな本、授業中に笑う瞬間、人間関係に臆病なのに結局人好きなところ。似ているところが見つかる度になんだか嬉しくなって2人で笑った。

でも、1学期も後半に差し掛かると、クラスの子たちがゆうまと私を冷やかすようになった。私は、人から注目を集めたり噂をされたりするのが苦手だった。ゆうまと話すのは、図書委員で仕事をするときだけになった。ゆうまは、「最近どうしたの」と少し寂しそうに聞いた。私は「大丈夫」と誤魔化した。

そこからゆうまと少し距離ができていた。そんな時にゆうまに彼女ができたと聞いた。その瞬間にやっと気づいたのだ。

好きだと言えないぐらい、好きだと認めたくないぐらい、ゆうまのことが好きだった。

好きだと言えず、好きだと思われるのも怖くて、臆病な私は逃げた。でも、そんな私の代わりに素直な女の子がゆうまの隣にいた。

臆病で素直になれない自分が悔しかった。